昨今、政府がベンチャー・スタートアップ支援に注力するなど、今後スタートアップ企業によるイノベーションの加速が期待されています。
しかし、そもそもベンチャーやスタートアップ企業の定義がよくわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで、
- ベンチャーとは何かを知りたい方
- スタートアップ企業との違いなど基礎的なことを知りたい方
- 最新の動向を知りたい方
を対象に、ベンチャー企業の定義やスタートアップ・ユニコーン・メガベンチャーとの違いから最新の政府・企業動向についてわかりやすくまとめます。
日本では優れたベンチャー企業が多数存在し、革新的なサービスを日々打ち出しています。当サイトでは500社を超えるベンチャー企業のデータベースを構築し、面白いベンチャー企業を完全無料で紹介しているので、興味のある方はぜひ他の記事もご覧ください。
ベンチャー企業とは?
ベンチャー企業の定義
ベンチャー企業とは、設立間もない新興企業・成長過程にある企業の総称です。ベンチャー企業は、今までになかったビジネスモデルや独自の技術を生かしたサービスを提供するのが特徴です。
例えばメルカリは、これまでになかった「個人間で売買する」という新しいビジネスモデルを作り上げて日本を代表するベンチャー企業となりました。
メルカリは「新しいビジネスモデル」で成長した企業ですが、「新しい技術」で成長したのがPreferred Networksです。この会社は高度成長期にはなかったAIという技術を磨き、ロボットの高度化や自動運転などの技術開発に取り組んでいます。
実はベンチャー企業には明確な定義はないので、一般的にベンチャー界隈の人が持っている認識のもと記述しています。
成長ステージごとの特徴
ベンチャー企業と一口に言っても、創業したばかりの会社と上場直前の企業ではその特徴が異なります。一般的にベンチャー企業の成長は4段階のステージに分けて説明されており、以下の表にステージごとの特徴をまとめます。
ステージ | 状況 |
シード | ・まだサービスも開始しておらず、事業アイデアをまとめてサービスやプロダクトを作りこむ段階 ・マンションの一室や狭いオフィスで泊まり込みで作業するイメージ ・気合と根性でやりきれる人材が必要 ・メンバーは数人程度 ・資金調達額は数百万円程度 |
アーリー (シリーズA) | ・サービスやプロダクトの提供を開始し、売上確保のために躍起になって営業していく段階 ・がむしゃらに営業できる人材が必要 ・メンバーは10人前後 ・資金調達額は数千万円程度 |
ミドル (シリーズB) | ・サービスが軌道に乗り、単月黒字を達成する頃。急速に成長し、顧客からの問い合わせで受注できることもある段階 ・ベンチャーっぽいキラキラしたオフィスに移り住む ・財務などのバックオフィス人材も増えてくる ・メンバーは数十人程度 ・資金調達額は数億円程度 |
レイター (シリーズC) | ・経営が安定し、IPOや事業売却が視野に入る段階 ・ここまでくると大手に似た組織体系になってくる ・メンバーは50人以上程度 ・資金調達額は数億から数十億円程度 |
スタートアップ、ユニコーン、メガベンチャーとの違い
ベンチャーとスタートアップ、ユニコーン、メガベンチャーとの違いを理解する際は上記の図をご覧ください。
スタートアップ企業とは
スタートアップ企業とは、ベンチャー企業という分類の中でも特に高い革新性があり、短期間で資金調達をしながら圧倒的なスピードで成長する企業のことを言います。
また、ベンチャー企業は中長期的に安定した経営を目指すのに対して、スタートアップ企業はIPOやM&A(事業売却)などEXITを強く意識している点にの違いがあります。
ユニコーン企業とは
ユニコーン企業とは、スタートアップ企業の中でも市場からの評価が高く、評価額が約1,000億円を超える企業の事を言います。
一般的にも知られている企業で言えば、ニュース配信アプリのSmartNews、タクシーGOのMobility Technologiesが2023年5月19日時点のユニコーン企業です。
日本や世界のユニコーン企業について知りたい方は以下の記事もご覧ください。
メガベンチャーとは
メガベンチャーとは、ベンチャー企業の中でも順調に事業を拡大し、見事上場を達成して大企業の仲間入りを果たした企業のことを言います。
メガベンチャーレベルになると一般的な認知度も高くなり、メルカリ・ビズリーチ・サイバーエージェントなどが日本を代表するメガベンチャー企業です。
日本のメガベンチャーについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ベンチャー企業の社会的意義
例えばメルカリは、個人間の売買を活性化したことで「本業以外でも個人が稼げる仕組み」「いらないモノがお金を生む」という新たな価値を作り出しました。
このようにベンチャー企業は新しいアイデアや革新的な技術で世の中に新たな価値を生み出したり、世の中の不便を解決するといった社会的意義を持っています。ここではベンチャー企業の社会的意義について詳しく解説します。
経済成長と雇用創出
ベンチャー企業は新たな市場を開拓し、競争力のある製品やサービスを提供することで経済成長を促進します。また、成長するベンチャー企業は雇用機会を創出し、地域の雇用率向上に寄与します。
技術革新と産業発展
ベンチャー企業は革新的な技術やアイデアを追求し、新たな産業の創出や既存産業の発展に寄与します。新しい技術やビジネスモデルの導入により、効率性や生産性が向上し、経済の競争力が強化されます。
社会課題の解決
ベンチャー企業は社会課題の解決する上でも重要な位置づけとなっています。例えば、環境問題や健康問題などに対して、再生可能エネルギーの供給や自然界で分解しやすい材料など持続可能なソリューションを提供が期待されています。
多様性と包括性の促進
ベンチャー企業は既存のルールや国境にとらわれずに事業展開できるので年齢・性別はもちろん、国籍・文化の壁を越えて多様な背景や視点を持つ起業家や従業員が一緒に働く場合が多いのが特徴です。そのためベンチャー企業の発展は多様性と包括性の促進に繋がり、社会全体のイノベーション力と競争力を向上させます。
チャレンジ文化の醸成と起業の促進
ベンチャー企業はリスクを冒しながら新たなビジネスを始めることに挑戦します。彼らの存在は起業への意欲を高め、新たな起業家を生み出し、イノベーションと経済成長のエンジンとなってビジネス環境全体に刺激を与えます。
大企業との協業と連携
昨今は、ベンチャー企業と大企業が盛んです。大企業はベンチャー企業の革新的なアイデアや技術を取り入れることで市場競争力を強化し、ベンチャー企業は大企業の資源やネットワークを活用することで成長を加速させます。このような連携は産業全体の発展に寄与し、日本の競争力を高める効果があります。
地域経済の活性化
ベンチャー企業は地域において活動を展開し、地域経済の活性化に寄与します。彼らの存在は地域内のビジネスエコシステムを豊かにし、地域の魅力や競争力を高めることがあります。また、ベンチャー企業の成功は他の起業家に刺激を与え、地域全体の起業意欲を高めることもあります。
これらの要素により、ベンチャー企業は社会的な価値創造の重要な源泉となっています。彼らの活動は経済発展、イノベーション、社会問題解決、雇用創出、地域経済の活性化など、幅広い社会的な利益をもたらすことが期待されています。
ベンチャー企業の資金調達方法
ここでは、起業家がベンチャー企業を始める際の主な資金調達方法として融資、エクイティ(株式)、補助金について解説します。
融資
融資とは、銀行などの金融機関からお金を借りることで資金を集める手法です。そのメリット・デメリットは以下の通りです。
- 迅速な資金調達が可能であり、返済計画に基づいて返済することができる
- 利息や返済期間などの条件を交渉する余地がある
- 企業の経営に対する制約が少なく、経営権は保持できる
- 融資には返済義務があり、返済能力に応じて融資額が決まる
- 利息や手数料による追加負担が発生する
- 返済期間中は返済額によるキャッシュフローへの負担が続く
エクイティ(株式)
エクイティは会社の株式を発行し、事業会社、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家にその株を買ってもらうことで資金調達する方法です。そのメリット・デメリットは以下の通りです。
- 融資より多額の資金を調達できる可能性がある
- 返済義務が発生しない
- 投資家から事業成長のための支援を受けられる場合がある
- 株式譲渡によって投資家が経営に影響力を持つことになり、自由な経営ができなくなる
- 投資家との意見や利益配分に関する調整が必要になる
補助金
補助金は政府・自治体などが産業発展や地方創生などを目的に一定条件のもと、企業の事業活動に対する金銭面を支援する制度です。そのメリット・デメリットは以下の通りです。
- 返済する必要がない
- 補助金は産業育成のために一定の条件をクリアした企業のみに支給されるので、補助金を受け取ること自体がPRになる場合がある。
- 自社が対象となる補助金が資金を必要とするタイミングであるとは限らない
- 返済不要かつ申請は幅広く受け付けるので競争が激しい
- 補助金の財源は税金であるため応募や報告書など資料作成に多くの時間をとられる
ベンチャー企業の資金調達はベンチャーキャピタルからの資金調達がよくニュースになっていますが、融資や補助金のメリット・デメリット、自社の成長ステージや事業状況も考慮して適切な方法で資金調達を選択するというのも起業家の腕の見せ所になります。
優良なベンチャー企業の見極めるポイント
日本にはベンチャー企業が1万社程度あると言われていますが、すべての企業が成功するわけではありません。そのためここからは優良なベンチャー企業を見極めるポイントを紹介します。
社長の経歴や課題意識
ベンチャーは社長の影響力が絶大であり、成功するかはほぼ社長次第といっても過言ではありません。
そのため、社長がこれまでどのような経歴を歩んできて、どのようなビジョンを掲げて起業したのかは、その企業の事業方針にも関わってきます。経歴で言えば、
- 戦略系コンサル出身で、ビジネスの種を見つけて自ら起業
- 大学での研究成果を社会実装するために自ら起業
- 会社での勤務経験はなく、大学時代から起業
など経歴の違いによって社長の立ち振る舞い、事業計画の立て方や組織作りに違いが出るのはむしろ自然なことです。
また、課題意識で言えば
- 産業界にイノベーションを起こして日本の経済を豊かにしたい
- SDGsを意識してプラスチックに代わる自然に優しい素材を開発したい
- これまでにないエンタメを作ってもっと楽しい世界にしたい
といった課題意識の違いによって、大事な局面での意思決定基準は大きく変わることになります。
このように社長の経歴や課題意識の違いによって、企業としての性格も大きく変わってくるので、ベンチャー企業を見極める重要なポイントとなります。
会社HPの社長挨拶、社長のインタビュー記事や展示会のセミナーなどが情報源となります。
革新的なビジネスモデルや独自技術の有無
例えば、メルカリは「個人間で売買できるプラットフォーム」という新たなビジネスモデルで成長した企業です。
このように大企業では容易に真似できないようなビジネスモデルや独自技術を持っているかはベンチャー企業の生き死に大きくかかわります。
独自技術で言えば、HIROTUバイオサイエンスは「尿の匂いからがんの有無を判別する線虫の発見」という大学での研究成果をもとに起業してサービスを提供しています。
日本人はガンでの死亡率が高いので、この技術で早期発見が増えれば日本人の死亡率を変化させる可能性を秘めていますね
もし革新的なビジネスモデルや独自技術がない場合は、簡単にライバルに真似されて値下げ合戦となり、最終的に自社も真似した企業も売上が増えていかないという負のスパイラルに陥っていきます。
例えば特色のないWEB制作会社の場合『安価なサービス』だけが決め手になってしまい、仕事を増やしても儲からず、従業員の給料も上がりません。
日本は長いデフレで給料が上がっていませんが、独自技術を磨いてサービス価格をあげられる企業を増やすというのもデフレ脱却の糸口となります。
以上の事から、革新的なビジネスモデルや独自技術の有無は企業の生き死に関わる重要な要素として必ず確認すべきポイントです。
市場規模
どんなに革新的なビジネスモデルや技術を持っていたとしても、その市場規模が10億円しかなかったらシェア50%を獲得しても、売上5億円が頭打ちということになります。
そのため、どの市場で事業を展開し、その市場規模が100億円なのか1000億円なのかもベンチャー企業を見極める重要な要素です。
市場規模はベンチャー企業の会社紹介に記載されていることが多いですが、記載がない場合はGoogleで「●●+市場規模」と検索すれば、矢野経済研究所の調査レポートなど、無料でもそれなりの情報を拾うことができます。
市場ニーズを満たすサービスかどうか
優れた技術を活かし全力でサービスを作ったとしても、誰にも需要がないサービスであれば受注を獲得することはできません。
日本では「良いものを作れば売れる」という考えのもと、技術力を前面に出して高機能・高価格でプロダクトを作って、海外のシンプルで安価なプロダクトにシェアを奪われたという苦い過去があります。
ベンチャー企業も新しいサービスを作るときに自分がやりたいことや発想を具現化する事だけに注力して市場ニーズに目を向けず、かつての日本企業と同じ道を辿るケースが多々あります。
そのため、独りよがりのサービスになっていないか、本当に市場のニーズを満たすサービスを作っているのかという観点は重要なポイントとなります。
社員の離職率
どんなに斬新なビジネスモデルでも社員の離職率が高ければ持続的な会社経営は困難です。
しかもほとんどのケースでは優秀な人材から会社を去り、他社に引き取り手のない人材が残っていく構図となるため、毎月人が辞めていくような会社はジリ貧となります。
急成長中の企業で年間数十人・数百人単位で社員の総数を増やしている企業を除き、社員の総数は変わっていないのに社長・役員以外の社歴がほとんど1年未満の従業員ばかりだったら従業員が辞めやすい会社です。
ベンチャー企業は日常的に人手不足かつ資金が潤沢ではないので、激務かつ給料が少ないことも多いですが、その中でも
- 社長が掲げたビジョンへの共感
- 将来的な給料アップの可能性
- スキルの向上
- 社会貢献の実感
- 職場環境を整える会社側の努力
によって社員を大事にして低い離職率を実現することは可能であり、そのような企業こそが将来の成功を掴むことができます。
優良なベンチャーキャピタルから投資を受けているか
世の中にはベンチャー企業のみを対象に投資する「ベンチャーキャピタル(以下VC)」という会社が存在します。
VCは優れた起業家や革新的なビジネスモデルを展開する企業を常にリサーチし、毎日数社・年間数百社のベンチャー企業と面談して出資するかを検討します。
つまりVCとはベンチャー企業の目利き人であり、VCから出資を受けている企業は投資のプロがあらゆる面で調査して成長が見込める企業だと判断されたといこうことです。
ただし、VCは10社投資して1社上場すれば勝ちという世界です。VCが出資しても9社は上場せずに終わるということも知っておく必要があります。
いずれにせよVCという第三者に認められたという点で、VCから出資を受ける企業は一定の成長可能性はあると言えるでしょう。
VCは経営改善を要求したり、上場やM&AなどのEXITを要求してくるため、あえてVCからの出資を受けずに融資や補助金で事業成長させる企業もあります。
ベンチャーキャピタルについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
表彰歴の有無
ベンチャー企業が第三者から評価されているかはVCからの出資状況だけでなく、第三者機関からの表彰歴も参考になります。
例えば日本政府はスタートアップ支援に注力すると宣言しており、有識者に評価を依頼して「JAPAN VENTURE AWARDS]や「J-Startup」などの枠組みを設立し、優秀なベンチャーを評価・支援しています。
ベンチャー企業は表彰歴をHPに記載することが多いので、「誰から」「どんな基準で」表彰されているかを確認してみるのが有効です。
日本の主なベンチャー表彰制度はこちらです。
- J-Startup|経済産業省(リンク)
- JAPAN VENTURE AWARDS|独立行政法人中小企業基盤整備機構(リンク)
- JEITA ベンチャー賞|JEITA(リンク)
- リアルテックベンチャー・オブ・ザ・イヤー|株式会社リバネス(リンク)
- EY Innovative Startup|EY新日本有限責任監査法人(リンク)
- すごいベンチャー100|東洋経済(リンク)
- 日本の起業家ランキング 2022|Forbes(リンク)
- 大学発ベンチャー表彰|国立研究開発法人科学技術振興機構(リンク)
- 2022 NEXTユニコーン選定企業一覧|日経テレコン(リンク)
- INTRO Showcase|BRIDGE TOKYO(リンク)
- 未来を創るスタートアップ100|キープレイヤーズ(リンク)
- ベストベンチャー100|イシン株式会社(リンク)
- 日本サブスクリプションビジネス大賞|日本サブスクリプションビジネス振興会(リンク)
なお、表彰歴がない=ダメなベンチャーとは一概に言えないので、表彰歴は参考程度に考えておきましょう。
広い事務所への移転経歴
ベンチャー企業は自ら「経営が危ない」と公言することはなく、財務状況も公表していないので極端に言えば中で働かないと本当に成長しているかわからないケースもあります。
そんな時に広い事務所へ移転しているかも一つのポイントです。
事務所の移転理由は様々ですが広い事務所に移転している企業は、事業が拡大し人材を増やす好循環に入った企業ということです。
そのような企業は数年に一回事務所移転や事務所拡張を行っているので、会社の沿革やニュースをチェックしてみるのも有効です。
ベンチャー支援に関する政府動向
スタートアップ育成5か年計画の発表
日本政府は2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、スタートアップ担当大臣を設置するとともに、2022年11月28日にスタートアップ育成5か年計画を発表しています。
この計画では、スタートアップ企業への投資を促進し、2027年度にはスタートアップ企業への投資を10兆円規模にすることを目標としています。
さらに将来においてスタートアップを10万社創出し、ユニコーン企業を100社創出することで日本がアジア最大のスタートアップハブとして政界有数のスタートアップ集積地となることを目標としています。
その目標を達成するために政府は3つの柱を打ち出しました。
- スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
- スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
- オープンイノベーションの推進
ここからはそれぞれの柱の中で実施される具体的な支援策について解説します。
第1の柱:スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
ここでは起業に関する意識調査の結果、起業を望ましい職業選択と考える人の割合が中国では79%、米国では68%であるのに対し、日本は25%と先進国・主要国の中で最も低い水準にある状態を改善するために、スタートアップの起業を志す人材の育成を進める12の支援策が準備されています。
- メンターによる支援事業の拡大・横展開
- 海外における起業家育成の拠点の創設(出島事業)
- 米国大学の日本向け起業家育成プログラムの創設などを含む、アントレプレナー教育の強化
- 1大学1イグジット運動
- 大学・小中高生でのスタートアップ創出に向けた支援
- 高等専門学校における起業家教育の強化
- グローバルスタートアップキャンパス構想
- スタートアップ・大学における知的財産戦略
- 研究分野の担い手の拡大
- 海外起業家・投資家の誘致拡大
- 再チャレンジを支援する環境の整備
- 国内の起業家コミュニティの形成促進
第2の柱:スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
米国では成長ステージに応じてIPO・公募増資・ベンチャーキャピタル(以下VC)など多様な資金調達の手段が充実しており、その規模も日本を大きく上回っています。
その中でも、VCから投資を受けた企業は雇用の拡大やイノベーションに積極的な傾向があり日本においては米国に見劣りするVCによる投資件数・投資額を増やしていく必要があります。
また、スタートアップの事業展開や出口戦略の多様化の観点からストックオプションの環境整備や公共調達の拡大が必要と考え、第2の柱では28の支援策が準備されています。
- 中小企業基盤整備機構のベンチャーキャピタルへの出資機能の強化
- 産業革新投資機構の出資機能の強化
- 官民ファンド等の出資機能の強化
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構による研究開発型スタートアップへの支援策の強化
- 日本医療研究開発機構による創薬ベンチャーへの支援強化
- 海外先進エコシステムとの接続強化
- スタートアップへの投資を促すための措置
- 個人からベンチャーキャピタルへの投資促進
- ストックオプションの環境整備
- RSU(Restricted Stock Unit:事後交付型譲渡制限付株式)の活用に向けた環境整備
- 株式投資型クラウドファンディングの活用に向けた環境整備
- SBIR(Small Business Innovation Research)制度の抜本見直しと公共調達の促進
- 経営者の個人保証を不要にする制度の見直し
- IPO プロセスの整備
- SPAC(特別買収目的会社)の検討
- 未上場株のセカンダリーマーケットの整備
- 特定投資家私募制度の見直し
- 海外進出を促すための出国税等に関する税制上の措置
- Web3.0 に関する環境整備
- 事業成長担保権の創設
- 個人金融資産及びGPIF等の長期運用資金のベンチャー投資への循環
- 銀行等によるスタートアップへの融資促進
- 社会的起業のエコシステムの整備とインパクト投資の推進
- 海外スタートアップの呼び込み、国内スタートアップ海外展開の強化
- 海外の投資家やベンチャーキャピタルを呼び込むための環境整備
- 地方におけるスタートアップ創出の強化
- 福島でのスタートアップ創出の支援
- 2025年大阪・関西万博でのスタートアップの活用
第3の柱:オープンイノベーションの推進
第3の柱では、既存の優良企業が成長率を維持するためにも、スタートアップと連携して新技術を導入することが有効であるとして、既存の大企業とスタートアップ企業の連携によるオープンイノベーションを推進する9つの支援策を準備しています。
- オープンイノベーションを促すための税制措置等の在り方
- 公募増資ルールの見直し
- 事業再構築のための私的整理法制の整備
- スタートアップへの円滑な労働移動
- 組織再編の更なる加速に向けた検討
- M&A を促進するための国際会計基準(IFRS)の任意適用の拡大
- スタートアップ・エコシステムの全体像把握のためのデータの収集・整理
- 公共サービスやインフラに関するデータのオープン化の推進
- 大企業とスタートアップのネットワーク強化
以上の3つの柱と49の支援策によって日本政府はこれまでにない本気度でスタートアップの支援に乗り出しており、各支援策のさらなる具体化と効果に注目が集まっています。
2023年ベンチャー企業の最新動向
ベンチャー企業に関する知識が高まったところで、ここからは日本のベンチャー企業に関する最新動向について解説します。
エムスリーの2022年度売上が2,300億円を突破
エムスリーは、国内30万人以上、世界600万人以上の医師が利用するプラットフォームを活用し、『健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと』をミッションとして世界の医療変革にチャレンジする企業です。
具体的には、医療従事者向けの情報発信・医療従事者専門の転職支援や製薬会社向けのマーケティング支援など医療分野において多岐に渡るサービスを展開しています。
同社は(2023年5月24日時点)2000年以降創業で唯一日経225銘柄に選出されている日本のベンチャー企業の雄と呼ばれる企業です。
2000年9月の設立以降順調に売上を伸ばしており、2019年度には売上約1,300億円を達成。その後わずか3年でさらに1千億円を積み上げ、2022年度にはついに売上2,300億円を突破しました。
エムスリーが今後どこまで売上を伸ばすのか、第二第三のエムスリーが誕生するかが今後の日本の経済成長における大きなポイントとなるでしょう。
ispaceがIPOを達成、月への探査機着陸には失敗
ispaceは、月への移住に向けて本気で取り組む宇宙開発ベンチャー企業です。
同社は宇宙開発ベンチャーとしては国内で初めて2023年4月12日に東京証券取引所グロース市場に上場を達成し、2023年5月24日現在の時価総額は約1,096億円となっています。
そんなispaceは、2023年4月26日に民間で初めて探査機を月に送り込むことにチャレンジし、通信不良や燃料不足等の理由により着陸に失敗して大きなニュースとなりました。
それに対して同社はこのようにコメントしています。
着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現するうえでの貴重なデータやノウハウなどを獲得することができました。これらは、今後の月面探査を進める上で大きな飛躍であり、日本のみならず、世界の民間企業による宇宙開発を進展させる布石になると強く信じております。(同社プレスリリースより)
今回は失敗という結果になりましたが、スタートアップの社会的意義である「イノベーション」を宇宙開発によって起こしうる日本を代表する企業として今後の動向にも大きな注目が集まっています。
キャディが米国進出
キャディは、国内外の部品加工会社と連携して高い拡張性を持つ安定した製造キャパシティを実現し、発注会社から加工品数百点~数千点を一括して製作・納品まで請け負うファブレスメーカーです。
部品加工会社は苦手な営業をせずに受注を獲得でき、発注会社としては調達工数の大幅削減や一社依存の体制から脱却できるため双方Win-Winとなるビジネスモデルの構築に成功し、産業機器メーカー売上国内トップ20社の70%との取引実績があります。
国内での売り上げを順調に拡大していることから、2023年1月26日付で米国に現地法人『CADDi Co., Ltd. 』を設立し、アメリカでの事業を開始しました。
出典:キャディ会社説明資料より
売上高は公表していないものの、社員数の増加推移をみれば圧倒的なスピードで規模を拡大していることは一目瞭然です。
同社は「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げており、同社による製造業のイノベーションが今後も期待されます。
まとめ
今回はベンチャー企業とはという基礎的なところから、最新の政府動向・企業動向について解説しました。
日本では優れたベンチャー企業が多数存在し、革新的なサービスを日々打ち出しています。当サイトでは500社を超えるベンチャー企業のデータベースを構築し、面白いベンチャー企業を完全無料で紹介しているので、興味のある方はぜひ他の記事もご覧ください。
以上